宗教法人 真宗大谷派 有隣寺

住職からの言葉

2021年08月16日(月)

徳風幼児園初代 祖父江逸子の戦争

住職からの言葉

終戦記念日、次の朝
録画しておいたNHKの『銃後のまもり』を観ながら
思い出した祖母のこと

「惨めったらしいのが一番嫌。戦争は、綺麗なものを綺麗と言うことも、美しいものを美しいと声に出すこともできなくなる。みんな、ドブネズミみたいな色に染められて、顔を上げることすら許されなくて、下向いて…頭下げて、ペコペコして…
惨めったらしい、戦争なんて大嫌いよ」とこの時期、その時の映像がテレビに出ると直ぐに消していた。

祖母は文学少女あがりで
西帰するまで、たくさんの本を読み、多くの作家に目を向けていた

谷崎潤一郎
私が
男を虜にする。という言葉を初めて覚えたのは谷崎潤一郎の『痴人の愛』
そのあと、お約束どおりに『細雪』を読んだ。
何時も、きゃあきゃあしている私達三姉妹は、大人になったら、
其々、恋をし色んなものを抱え、
自分の道を歩いて行くのだとなんだか切なくなった。
その『細雪』を読んでいる時、祖母が教えてくれた。

『細雪』は最初中央公論に発表されたの、でも、軍に戦争文学ではないと、連載を止められたの。戦争は、文学も美しい世界も綺麗な着物も奪うのよ。
お祖母様は戦争なんて大嫌い。

本を読み、知らない世界を想像する。本からの知識で世界を広げる。そのことすら、戦争は許さなかったことを祖母から教えてもらった。

「『細雪』が、戦後、婦人公論で連載を再開した時、祖母は戦争が終わったことを確信したの。やっと、たくさんの本が読める。やっと言葉が自由に使える」

言葉まで奪う戦争。

16日朝に。

画像(143x180)・拡大画像(511x640)

祖父江逸子 先生


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