宗教法人 真宗大谷派 有隣寺

有隣寺だより

2022年04月14日(木)

令和4年 4月 第49号

有隣寺だより

有隣寺便り 第49号 令和4年4月 有隣寺住職 祖父江佳乃

 散りゆく桜を追いかけるように様々な花が咲き誇る季節に成りました。お変わりあいませんか。

生老病死 散りゆく桜の季節です。散っていくのに桜は咲きます。そして、人間も死を迎えるというのに生まれます。命を宿り、死に至るまでを人生と呼びます。お釈迦様は人生の避けられない苦しみを「生老病死」とおっしゃいました。老病死は言わずもがな、「老いること」それは歳をとる。年をとって心身の動きが衰えることを指します。
「病になる」は体を悪くする。患う。気分(精神)が悪くなる。事を指します。そして「死」は生命がなくなること=死亡、機能を果たせず能力を行使できない状態を指します。
それでは「生まれる」苦しみとは何でしょう。

生まれる 考えてみてください。思い出してみてください。あなたの一番最初。あなたが「いのち」を頂いた場所はどこだったか。あなたの「いのち」はどこで誕生したか。それは、お母さんのお腹の中です。精子と卵子が結びつきいのちが誕生します。それを妊娠と呼びますが、それはお母さんのお腹の中で起こります。ということは、間違いなく、命は母親のお腹の中で始まりを迎えます。そして十月十日、母親の胎内で、大切に大切に育てられ…。
誕生、たった一人でこの世に出ます。それを「生まれる」と呼びます。生まれるとは、それまで一緒いいた母親と別れることです。人間は生まれると同時に「別れ」を経験します。そのことをお釈迦様は人生の避けられない苦しみであり、人生の一番最初の苦しみとおっしゃいました。人生の一番最初に「母と別れる」大きな別れを経験しているから、先々に起こる別れを乗り越えていけるのです。別れの前には必ず「出遇い」があります。仏教では、その場で顔を合わせる・対面する・会見するという意味を持つ「会う」という字は用いずに沢山の沢山の偶然がやっと重なって、やっと遇えた意味を持つ「遇う」という字を用います。

育つ 「育つ」という字をよくよくご覧になってください。その中には「月」という字が含まれています。月は自分で輝くことができません。太陽の光を反射し、輝いています。人間も同じです。他者との出遇いによって光り輝きます。「生まれる」ことは母親のお腹から、たった一人、世間に身をおくことだけれど、人との出遇いによって人は育っていくのです。

天上天下唯我独尊 そして、その生まれた自身のことをお釈迦様は「天上天下唯我独尊てんじょうてんげゆいがどくそん」とおっしゃいました。お釈迦様はお生まれになってすぐ、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天という六道輪廻(何度も繰り返し、さまよい続けること)から解き放たれ、七歩、お歩きになり、天と地を指してこの言葉をおっしゃいました。それは、「天にも、地にも、私という人間は一人しかいない。誰と代わること、代えることの出来ない尊い命を私は頂いている。だから、私と同じように、目の前の人間も、横にいる人間も、命あるもの全て、代わること変えることが出来ない尊い存在だ。」という、生まれたこと、生きていくことへの尊い宣言です。
4月8日はお釈迦様のお誕生日です。
有隣寺徳風幼児園では、ひと月遅れで5月10日に、お釈迦様にお誕生を祝う『花まつり』を勤めます。
 お花いっぱいの花御堂の中で天と地を指していらっしゃるお釈迦様に甘茶をかけて、ご一緒にお祝いください。
有隣寺開基釋省念 有隣寺の開基(寺を創始した僧侶)は祖父江省念です。
祖父江省念 1905ー1996 昭和―平成時代の僧 明治38年9月18日にち生まれ
幼児から浄土真宗の説教僧としての修行を積む。独特の節回しで親鸞聖人の一代記などを語り、自坊の名古屋市有隣寺のほか全国各地で最盛期には年間400回に及ぶ説教会を開いた。平成8年1月2日死去。「日本人名大辞典」
著書である『節談説教70年』には俳優の小沢昭一さんが「祖父江省念の説教は、まず人間生活の機微をうかがって聴衆を笑わせます。あの毒舌感覚は当代の人気者―タモリ、たけしレベルのナウさであります。 しかし、やがてそのお説教の譬喩因縁(ひゆいんねん)ばなしが佳境に入るにつれ、人々は目頭に涙をうかべます。寛美(藤山寛美)、久彌(森繁久彌)のお芝居のクライマックスに、優るとも劣りません。
そして最後に満堂の群参は祖父江師に手を合わせ、ナンマンダブを唱えつづけます。もう師を、身近なホトケサマにしようとしているようです。ここは芸能と違うところでありましょう。
説教から芸能が生まれたことは恐らくたしかでしょうが、説教は芸能ではありません。布教活動です。
しかし、芸能者の私は、祖父江師のお説教から、どんなに多くのものを学んだか知れません。
私もまた、師に手を合わせます。」
このように、有隣寺開基省念は、「最高にして最後の説教使」と小沢昭一さん、永六輔さんから賞賛されました。ですが、この有隣寺を担わせていただいている私の役目は、省念を「最後の説教使」にしないことです。そのお役目の一つが省念忌説教大会です。早いもので12回目を迎えます。けれど本来なら今年は14回目。コロナウイルス感染予防の観点から2年お休みをしていましたが、今年は午前のみですが、再開いたします。もちろん、感染予防に充分、留意いたします。どなた様もようこそお参りください。
 
省念忌説教大会
5月15日日曜日 お勤め開始9時半より 
省念忌に向けての仏具磨きとお掃除5月13日9時半から お手伝いをお願いいたします。

白蓮会
行事のない月の22日(時々20日や21日に変更します)には、仏教のこと、あれこれ学ぶ白蓮会を開催しています。会の初めには有隣寺徳風幼児園の年長組の子ども達と一緒にお勤め=お経のお稽古をします。子ども達は身内ではない大人に褒められたり、教えられることで自信が身につき、自己肯定感が生まれます。大人達も子どもに伝えるために、丁寧に丁寧にお勤めをし、出遇ったもの同士が、ともに育ち合うことを実感します。
お念珠の扱い方、お焼香の仕方、法事やお葬式はなぜするのか、仏様のこと、そのほか色々
気軽にご参加ください。1時半からお勤めします。

みんなのお寺
有隣寺は、みんなのお寺です。本堂にいらっしゃる御本尊(最も大切な、教えの中心になる仏様)の阿弥陀如来様は、どんなものでも(怒っていようが、泣いていようが、人を傷つけていようが、浅ましい心を持っていようが、笑っていようが、喜んでいようが)その身そのままを引き受けてくださる仏様です。コロナ禍でしんどくなったり、子育てや、日々の生活の中、息苦しさ、生き苦しさを感じたら、どうぞ本堂にお越しください。手を合わせた後、大きく深呼吸してみてください。そこに身を置いて、静かに仏様と向き合うと少し楽になるはずです。もちろん、嬉しいことや楽しいことの報告も・・・。ようこそ。ようこそ。

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